JR東日本は4月6日、北東北3県でSuicaエリアの新設を発表した。Suica対応駅の拡大は2020年春の常磐線全通時以来で、Suica対応エリアの新設は2006年の新潟都市圏以来

https://www.jreast.co.jp/press/2021/20210406_ho02.pdf

導入エリアは以下の通り。
青森エリア:奥羽本線 青森~弘前
秋田エリア:奥羽本線 和田~秋田~追分、羽越本線 秋田~新屋、男鹿線 全線
盛岡エリア:東北本線 盛岡~北上、田沢湖川 盛岡~雫石、釜石線 花巻~新花巻
なお、各エリアの範囲を超えて相互の駅間では利用不可能。

注目すべき点が数多くある。
・各エリアが非常に小規模であること
ICカードの利用可能エリアはSuica首都圏やICOCAを始めかなり大きい規模になる傾向にある。一方今回設定される3エリアは棒線あるいはT字に分岐する程度のかなり簡単な路線網(網とすらいえないが)になっている。どちらかと言えばJR九州のSUGOCAエリアのうち長崎・宮崎・鹿児島各エリアのように県庁所在地への通勤範囲、くらいに限っている。そしてこのエリアに応じる形で、

・近郊区間の新設を行わない
JR東日本は新潟および仙台にも大都市近郊区間の特例(大回り乗車やきっぷの有効日数に関わる規定)を適用しているがこれはSuicaであれば経路が指定できないからどのような経路を通っても同じ運賃にしようという意図の元である。しかし今回導入されるエリアは経路が一意に定まるのでそのような特例を整備することはなかったのであろう。

・並行在来線の三セク各社では導入しない
北陸地区ではJR西日本よりむしろあいの風とやま鉄道が先んじてICサービスの導入を行いこれに後追いの形でJR西日本がエリア拡大を行った。一方今回はあくまでJR東日本のみの話であり例えば青い森鉄道線の青森~八戸とかIGRいわて銀河鉄道線の盛岡~二戸とかは今回話に上がらなかった。もちろん(旧)北陸本線の線形と異なり(旧)東北本線は分岐部がかなり多くその処遇まで考える余裕がなかったことも理由に挙げられるだろうが、やはり大きな理由としては

・ICサービス改革の試金石か
ニュースリリースの3.によると「従来自動改札機にあった Suica の主要な機能をセンターサーバに集約します。」とある。つまり一極集中で管理するシステムに切り替えるわけである。もちろんこれにはリスクが伴い、もしこれをいきなり首都圏に導入して、不具合によりサーバがダウンすれば首都圏数百の駅でSuicaが使えない状況になり大混乱を生ずる。しかし十数駅のエリア内での利用に限ってこのシステムを実証することにより今後のICカードサービスの拡充を図る狙いである。ニュースリリース曰く、「将来的には、さらなる Suica エリア拡大のほか、モバイル Suica などスマートフォンによる多様 なサービス提供などが実現できるようにクラウド化を進めます。」とあり、例えばICOCAエリアであればエリアの範囲は山口から富山まで非常に広範囲に及ぶものの、改札機のキャパシティの制限もあり利用には200km以内(例外あり)の制限をかけている。今後このクラウド化が進めばその制限も緩和しうるものと考えられる。Suicaエリアは(特に首都圏で)拡大しすぎることによるきっぷの制約(大都市近郊区間にエリア全体を指定することによるもの)の影響があるためその辺りへの対策も施されるものと期待したい。更に「スマートフォンによる多様なサービス提供」とある部分については予想の域を出ないが、例えばスマホとICカードを連携しスマホで事前に決済した指定券やグリーン券の情報をICカードで乗車時に認証してその券の代わりとする、などといったことが想定できる。


ともかく2020年に鹿島線と常磐線へSuicaエリアの拡大を皮切りにどうやらJR東日本もICサービス(Suicaエリアの拡大)に積極的になっていると言える。今後まず考え得るのは山形、新潟、長野の一部対応区間へのSuicaエリア拡大/Suica定期券適用だろう。例えば個人的には仙山線などは導入しやすそうな気もする。また、車載ICリーダーの導入も今後充分期待できる。更に地方バス会社との提携はJR西日本ともども積極的である。今後このことについても扱う機会があればと考えている。